RETSU
KITAGAWA
from
SmartDrive, Inc

Letter from Retsu Kitagawa

SmartDriveは、自動車のビッグデータを解析し、さまざまな未来のビジネスを創造するスタートアップです。SmartDriveデバイスは、社会の中の自動車を「IoT化」し、そのデータは未来のクルマ社会をつくります。
SmartDriveはどのようにして佐俣アンリとともに、クルマの「でかい未来」に挑戦するようになったのか。CEOの北川烈が語ります。

クルマがつくる、未来のデータ

僕たちの社会を大きく変えてきたのは、自動車のような「移動体」の発明です。
自動車が無かった頃と今では、人々のライフスタイルはもちろん、街のつくり方そのものが変わっている。移動体が社会に与える影響はとても大きいのです。
現在、グーグルやテスラが開発を進める自動走行車、電気自動車がつくる未来はもう夢物語ではありません。それらが普及する未来、きっとまた僕たちが見る日常風景は大きく変わります。
自動走行車は完全にデータで管理されて走行するため、渋滞知らずです。宅配便はさらに時間通りに到着し、せっかくの休日に商業施設の駐車場に大行列することもなくなります。さらに自動車の多くは所有するものではなくなり、使いたいときに呼び出すと、目的地まで連れて行ってくれるようなものになる。人々は運転と事故から開放され、安全な移動体の中で、新しいライフスタイルを築いていきます。
SmartDriveは、そんな未来に必要な、自動車の「データ」の価値を今からつくっていく会社です。

僕たちは案外、身近な自動車のことを知りません。
たとえばこうしている今も、日本中の自動車の97%は止まっています。都市に住む多くの人々が「週末ドライバー」であることなどから、日本の自動車の稼働率はわずか3%なのです。実はほとんどの自動車は使われていないのです。
今の自動車産業、保険、さらに街の道路などの社会インフラの全てが、この3%の稼働率をもとに設計されている。

自動走行車が普及すると、この社会インフラが自動走行車を中心に再編されてゆくことになります。その時に必要になるのが、自動車の走行データ「テレマティクスデータ」なのです。
どんな人が、どこへ、何の目的で自動車で移動しているのか、どんな運転が事故を起こしやすいのか、スピードを出しやすい車はどんな色なのか、どこで渋滞が起こりやすいのか…そんなテレマティクスデータを解析することによって生み出される、移動体の未来社会。その風景を誰よりも早く見てみたくて、僕はSmartDriveを創業しました。

謎に投資してくれた、アンリさん

SmartDriveは、自動車に取りつけられた小さなデバイスから移動距離、アクセルの使い方、シートベルト使用の有無など、さまざまなテレマティクスデータを取得します。
今は小さくスマートなデバイスですが、僕がアンリさんと出会った2014年の頃はまだ、モックと呼ばれる試験的な装置でした。
いろんな投資家や起業家の方に説明をしても「これって本当にビジネスになるの? 未来では本当に自動走行車が普及してるの?」と返されました。でも、アンリさんだけは「このデータって、たくさん集まったらおもしろいね」と僕の見る未来に真っ先に共感してくれたのを今でも覚えています。

しかしハードウェアスタートアップは本当に事業資金がかかります。少しプロダクトの仕様が変わるだけで、1千万円かけてつくったものが一瞬でただの金属片に変わってしまう。そんな中でも「難しいプランに経験のない起業家。そういう意味では最悪だよ、お前のプランは。最悪だけど、俺はお前という謎に投資したい」と言ってくれたのはアンリさんだけでした。

僕はアンリさんのことを『ドラクエ』の冒険に喩えて話すのが好きなんですが、アンリさんはみんなが買い忘れているアイテムを全部持ってるような人なんです。
僕はよく、先を急いでしまうので、大切なアイテムを取らずに街を通りすぎてしまうことが多いのですが、そんな時にアンリさんはいつも「これ取り忘れてたぞ」と教えてくれる。本当に必要な人を紹介してくれたり、僕に抜けている経営の基礎を教えてくれるんです
。 次の街にある、新しいアイテムのことを教えてくれる人は世の中にたくさんいるんですが、次の街に無いアイテムは誰も教えてくれないんです。取り忘れた後になってその大切さに気づくんですけど。

自分と未来との距離は、挑戦が縮める

SmartDriveは、テレマティクスデータをどのように解析するかで、無限にサービスを生み出すことが可能です。
現在、SmartDriveはアクサダイレクトと提携し、SmartDriveデバイスによって安全運転指数を計測し、その数値に応じて保険料が割り引かれる「テレマティクス自動車保険」を一般ドライバー向けに開発しています。また法人向けにも、宅配便や企業の営業などに使われる法人車両のデータを解析し、走行ルート最適化支援を行うサービスの開発を進めています。
さらに車内外にカメラを搭載し、運転中の映像データを解析する取り組みも進めています。映像データをテレマティクスデータとかけ合わせて解析することで、ドライバーの状態と外部環境の関係性を把握することができます。たとえばドライバーの状態を把握し、居眠り運転防止に役立てたり、車間距離がどれくらいの時に、どんな運転をするドライバーが多いのかを知ることで、交通安全を向上させる取り組みに活かすことができます。

アンリさんはよく、「でっかいことをやろう」と言います。大きいことはなかなか実現するのは難しい。でもSmartDriveをやっていて気づくことは、社会的に大きくて難しい問題は、解くべき価値がある重要な問題だということです。スタートアップはリスクの大きなチャレンジだと言われていますが、社会的に価値のある課題に挑戦している限りは潰れることはないし、自分たちの価値もなくならない。
そうして挑戦している限り、僕が見たい未来の風景は、必ずこっちに近づいているんです。