Interview

「IVSで優勝する前から見えない価値を信じていた」ANRI×SHE対談

SHE株式会社

2022年10月末、シリーズBで約18億円の資金調達をしたSHE。そのSHEに、ANRIは前回ラウンドの資金調達時から、投資支援を続けています。それはSHEの可能性を信じ続けているからこそ。

いよいよ追い風を受けて走り出すSHEの今までの軌跡とこれからの展望をSHE株式会社 代表の福田恵里さん(以下、福)とANRI株式会社のベンチャーキャピタリスト河野純一郎さん(以下、河)にお話を聞きました。

SHE株式会社
「一人一人が自分にしかない価値を発揮し、 熱狂して生きる世の中を創る」をビジョンに据え、 2017年に創業。 主要事業である『SHElikes(シーライクス)』では、 誰もが自分らしい働き方を叶えられるよう、 WEBデザインやWEBマーケティングなどのクリエイティブスキルレッスンやコーチングプログラム、 仕事機会を提供。2021年には、理想のキャリアや人生の実現のために不可欠なお金の知識の獲得を目指すサービス「SHEmoney」の展開を開始。


女性が自分らしい働き方を叶えるためのサービス

──SHEの事業について教えてください。

:SHEは創業6年目のスタートアップです。「一人一人が自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を創る」というビジョンを掲げてミレニアル世代の女性のキャリア支援を行う「SHElikes」をやっています。

──SHElikesは具体的にどのようなものなのでしょう。

:21世紀を生きる女性たちが自分らしい働き方を叶えられるように、webデザインやwebマーケティングなどのクリエイティブスキルレッスンや、コーチングプログラム、お仕事の機会などを提供しています。働き方が多様化し、終身雇用ではないプロジェクト型のワークスタイルの価値が高まる中で、個として活躍したい女性たち6万人以上に受講いただいています。

本質的な価値を理解して視座を上げてくれた

──ANRIとの出会いは、何がきっかけだったのですか?

:最初のきっかけは(ANRIの代表の)佐俣アンリさんに相談に乗っていただいたことです。私が人生で1番しんどくて、もうこれ以上会社を続けられないと思った時に話を聞いてくれて、解決方針を考えてくださったんです。

:その時、うちのキャピタリストの江原とも出会っているんですよね。

:そうです。まだ投資を受けていないにも関わらず、大変な時期を過ごしている間も江原さんはずっと連絡をしてくれました。半年後に投資をしていただくことになり、河野さんに出会ったんです。

──お互いの第一印象を覚えていますか?

:福田さんに会うまでは、僕もSHEの事業を平面的にしか捉えられていませんでした。顧客対象を単純に女性に絞ったスクール事業で、スタートアップとしては正しい戦略だけど、そこまで可処分所得が高くない層をターゲットにしてどうやってLTVを獲得できるのだろうと。事業ステージがある程度進んだフェーズということもあり江原に協力を頼まれたものの、正直「困ったな」と思っていました。けれど、福田さんにお会いしてみたら、芯の強さや自分たちの事業への確たる自信、そして野心を持っていて、それでいて謙虚な方でした。新鮮なミーティングだと感じたのを覚えています。

:その時のお話は衝撃的でした。当時、私たちもいろいろな投資家の方にお会いしていたのですが、得られる評価は「女性特化型のカルチャースクール」の類ばかりでした。一方で売上は順調に伸びていたので、一定の評価をされるだろうと甘い気持ちでいたんです。ところが河野さんは、ブランドやコミュニティといった無形の資産に対して理解をした上で、厳しいことも言ってくれたし、メルカリやラクスルがどうやって成功していったかの話もしてくれた。SHEの事業を通して不均衡や格差を是正するという、視座が上がる気づきを与えてくれたんです。

:SHEは一義的な見方で事業の価値を矮小化されているけれど、その価値の正しい表現方法を見つければとんでもない会社になるんじゃないかと予感したんですよね。この時は細かい数字の話ではなく5年、10年先の未来の話をして、投資の条件には比較的厳しいものをお渡ししました。投資が決まったのはこの2ヶ月ほど後です。

熱狂するコミュニティがSHEの唯一無二の価値

──厳しい条件を出されたにも関わらずANRIの投資を受けたのはなぜだったのでしょうか。

:まず、当時はほぼ唯一、ダイバーシティー&インクルージョンに目標数値を掲げて取り組んでいるVCだったこと。そして、ブランドやコミュニティといった自分たちが価値だと信じているけれど、市場から適切に評価されていない部分を一緒に考えてくれる信頼感。資金調達よりも仲間集めに重点を置いていたので、絶対にANRIに入ってもらいたいと思っていました。

──河野さんは投資を通して、改めてSHEの魅力をどのように感じていますか?

:投資をする前に、TwitterでSHEのことをじっくり検索したんです。僕らではなく、ユーザーの評価が大切だと思ったので。そうしたらすごい熱量で、サクラじゃないかと疑ったほどでした。「SHEで人生が変わった」「本当に感謝してる」というコメントに溢れていたんです。これが福田さんの言う、自分の価値を発見し、居場所を見出し、学ぶ喜びや楽しさを知った女性たちなんだなと実感しました。そこで、これはコミュニティビジネスなのだと気づいたのです。単純に学ぶだけではなく、仲間とともに励まし、高め合いながら自分たちを磨く熱量を持ったコミュニティをすでに作り上げている。その熱量を経済価値に換算する指標を編み出してSHEの企業価値を表現できたら、新しい起業モデルになると確信しました。もう一つは、起業家としての福田さんの魅力です。ジャンヌ・ダルクのように牽引しているようで、メンバーに支えられながらともに歩んでいく。パワーを与えながら受け取りもする彼女にみんなが夢を重ね合わせているのが凄いと思いました。新しいリーダーシップ、起業家像を体現されていることに感動して。

:ちょっともう、胸がいっぱい過ぎて涙が出てきました。本当に嬉しいです。コロナ前の1番辛かった時から、コロナ禍、今までを支えてくれたANRIの河野さんがそう語ってくれる言葉が、尊いものに感じられて、胸がいっぱいです。

風向きを変えたIVSの優勝とSHEが創る未来

──IVSでも、みんなで優勝を勝ち取ったという印象を受けました。IVSにはどのような想いで臨まれたのでしょうか。

SHEの約束に「夢は口に出して伝える」があります。これを私も実行しなければと「IVSで絶対に優勝する」と言い切って臨みました。言葉に出すと自分に暗示をかけられますし、本気で優勝を目指していると社内や周りに伝わって、どんどん応援してくれる人が増えるからです。また、IVSのDX、SaaSといったわかりやすく収益性の高いビジネスが評価される、これまでの当たり前を覆すことが私の使命だとも感じていました。社会的意義と経済合理性を両立させるビジネスが求められていると見せたかったのです。

:あのプレゼンテーションと優勝を経て、またSHEをとりまく空気感が大きく変わりましたよね。事実、僕のところにSHEに投資したいという問い合わせが続々と届きました。かつては投資家に理解されるためにどうSHEの価値を伝えていくかが課題だったけれど、その風向きが変わってきていると感じています。

──最後に、これからSHEが目指すことを教えてください。

:まさにこの間、河野さんにこれからのSHEについて相談させていただいたんです。これまでは、SHElikesでスキルアップのための学びを提供してきましたが、次は働き方そのものをサポートしていきたいと考えています。具体的には、SHElikesで学んだ女性たちがその後10年、20年生計を立てていくためのワーキングプラットフォームを構想しています。学びの場と仕事を見つける場をシームレスにつなぎ、人生100年時代の学びとそれを活かす仕事を提供していきたいなと思っているのです。SHEさえあれば、世界中を旅しながら働いていける世界を作りたいんです。

:この話を福田さんとした時、SHEの経済圏の姿が見えてきました。SHEならば、誰でも生涯学び続けることができ、それを活かして働く時代を作れると思います。今は女性のイメージが強いですが、あらゆる格差や差別、理不尽なものを正す大きなチャレンジに僕も当事者の一人として関われたら幸せですね。

( 写真・文:出川 光 )

「起業家を信じるのが僕らの仕事」ANRI×ナレッジパレット対談

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